miumiuハートチャーム
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null 半兵衛には、利用価値がある。  かれを通じて、美濃衆の切り崩しを秀吉ははじめた。さらに情報もあつめた。 「猿は、美濃の政情にあかるい」  と、信長に認められるようになった。事実織田軍のなかで秀吉はずばぬけた美濃通になり、信長は何事も秀吉に相談せざるをえなくなった。  秀吉の秘密工作は、すさまじい。  一例をあげると、こうだ。  美濃の本城である稲葉山城のことである。 「稲葉山城はさすがに故道三殿の居城だっただけに兵糧蔵《ひょうろうぐら》の米がおびただしゅうござる。あれならば二年、三年の籠城《ろうじょう》にも堪えられましょう」  と竹中半兵衛がいったので、秀吉はなるほどと思い、半兵衛と一策を講じて、それをなんとか分散させようとした。  そこで半兵衛を通じて、すでに織田方に内通を確約している美濃三人衆を口説き、一策をさずけた。  美濃三人衆はさっそく稲葉山城に登城し、お屋形様である竜興に説き、 「将来、織田軍は、多方面から美濃に侵略してまいりましょう。兵や兵糧を、稲葉山城に集中しておいては国内各所での防戦ができかねます。よろしく分散あそばすのが、得策かと存じまする」  といった。  竜興は、愚物である。「ああそれも一理である」とその説を容《い》れ、ただちに城から兵糧米を運び出させ、守備兵も各地に分散した。  策は成功した。  秀吉はこの旨《むね》を信長に報告すると、 「猿、やったわ」  と膝《ひざ》をうち、いま一度念を押した。